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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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 (2)タヴック&メルジメッキ・チョルバス


《12月―チョルバの誘惑》 ~2003年12月の記録

 第2話 タヴック・チョルバス&メルジメッキ・チョルバス

この失敗があって、翌日のチョルバ作りは人任せにしないことに決めた。
以前から我が家の冷凍庫には、スープストック用として下拵えの時に出た鶏の骨を片っ端から入れてあったので、それを解凍してありあわせの胸肉1枚、塩と一緒にことこと水で煮出してタヴック・スユ(チキン・ストック)を作った。
鶏の旨みが十分出た頃、スープ用の大鍋で油を熱くして小麦粉を炒め、十分馴染んだところで、ストックを少しずつ目の細かいザルで漉しながら加えてのばしていった。
最後に、柔らかく煮上がった胸肉を細く割いて加えると、ロカンタで見るような明るい卵色にこそならなかったが、上品なクリーム色のタヴック・チョルバスが出来上がった。
時間を節約して早めに切り上げてしまったが、さらに時間をかけて煮出したり、胸肉でなく腿肉を使えば、鶏の旨みがさらに増しただろうし、サラダ油でなくバターを使えば、風味もさらに良くなっただろうと思われた。
しかしこれは、夫も娘たちも、そして義妹や姪までもが、合格点を出してくれた。
姪などは、翌朝の朝食の時にもこのチョルバを飲んでくれたほどだった。

すでにチョルバ作りの面白さに目覚めてしまった私は、翌日の夕食時にも再びチョルバに挑戦することにした。
過去に2回だけ試して、1度目は失敗。2度目は(私には決して不味いとは思えなかったのだが)夫にいまひとつ風味に欠けるなどと言われ、それ以来3度目に挑戦しきれなかったのがメルジメッキ・チョルバス(レンズ豆のスープ)である。メルジメッキ・チョルバスといえば、トルコの数あるチョルバの中でも定番中の定番。これが美味しく作れないとなると、豆腐の味噌汁すら満足に作れないのと同じこと。
しかし、水でいったん戻さないで最初から煮てしまうレンズ豆が、私には一番の苦手だった。煮え上がる頃には何倍にも膨れ上がるので、なかなかコツが掴めず、初めて時など、鍋一杯に膨れ上がった豆を相手に往生したものである。

しかし、今回は横に義妹が付いている。彼女に教わりながら作れば、そう酷いものにはならないはずだった。
半分ほどに水を張った大鍋に、コップ1杯ほどの赤レンズ豆と、玉ねぎ、人参、じゃがいもをおろし金で擂って入れ、義妹のアドバイスでにんにくも2~3かけ加えて、豆が柔らかくなるまで煮込むのだ。その後、(フードプロセッサーがあれば簡単なのだが、我が家にはないので)目の細かいザルで漉して滑らかにする。ここまでは私も知っていた。
一番の心配は豆の分量だったが、義妹にチェックしてもらうと合格であった。
漉して鍋に戻すところまで手伝ってくれた後、義妹は小鍋に油を入れて小麦粉を炒め始めた。さらにここに、擂ったにんにくやサルチャを加えるのだという。
そうか。私の作ったチョルバが風味に欠けていたのは、これだったのだ。
義妹はさらにナーネ(ミント、乾燥して小さく砕いたもの)を加えて香りをたたせ、チョルバで少しずつ伸ばしていき、最後にチョルバの中に戻した。後は全体にとろみが付くまで煮立たせて終わりである。

夫の田舎の方では、どんな料理にもサルチャとナーネ、ケキッキ(オレガノ、もしくはタイム)をたっぷり使う。サルチャもナーネもケキッキも、もちろん自家製だ。
この日使ったのも、アンネお手製のサルチャやナーネ。まさしくアンネ(お母さん)の味がしても当然だった。
私は、どちらかというとシンプルなメルジメッキ・チョルバスの方がさっぱりして好きだったが、夫の口には自然とこちらの方が美味しく感じられたようだった。
タマム(オーケー)。作り方も覚えたし、後は私にも美味しく思えるよう分量を工夫すればいい。
いつの間にかチョルバって難しいと思い込んでいたが、漉す手間を除けば、実に簡単でそして美味しいということに、ようやく私も気付き始めていた。

 (つづく)

第3話 イェシル・チョルバス、そして試行錯誤の日々



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